詩人:望月 ゆき
霧の森をぬけると
朝朱の陽が射し
湖はゼリーで
きらきらと波打っていた
向こう側へ行きたいの
今がたぶんその時だって わかるから
手をつないでね
ほら、
標識だって あるわ
わたしの胸には
かすかに
あなたにも見えないくらいの穴があいていて
ゼリーの先から風が吹くと
そこをすーすーと通りぬける
あなたがそれを埋めてくれたら
向こう側にも渡れるわ
ここにはまだ
スミレが咲いていないの
ほんの少ししか
あなたは一粒
氷砂糖をひろって
やさしく つめたく
わたしの穴をふさいだ
向こう側に行きたいの
スミレがきっとたくさん咲いて
今がたぶん
その時だって わかるから
そしたらきっと
あれを作るの
向こう側には
いつもたくさんあるように思う