詩人:甘味亭 真朱麻呂
遠ざかる意識をつないでまだ眠りたくない
終わってゆく今日に僕は深くなま暖かい
ため息をこぼした
どこまでも愛おしい人に伝えたいこの思いはやがて跡形もなく消えてしまう
いつかふたりがふたりじゃなくなってしまったら
さよならと言い放ったその一瞬でごく当たり前のようにすべては過去のものとして思い出す
古い記憶になってふりかえる脳裏にあなたの背中だけが見える
思い出せない表情だけが通り過ぎてく
夢のように幻になる
今日もあっというまに
声をあげて 気持ちを吐きだせばきっと君も悲しいだけの面影にはならないはずだ
浮遊霊のようにさまよう君の影だけが
僕のとろけた頭の中に憎たらしいくらい鮮やかに焼き付けられている
焼き増しされるように転写する今日と同じ1日を
明日も過ごす迷路のような複雑な世界
入り組んだ蛇の道
パズルを解くように
道なき道 獣道
トンネルくぐり
僕より高い草をかき分け必死に捜した答は未だ見つからずじまいで
悲しくても 切なくても日々は続いてく
どこまでも いつまでも 終わりをちらつかせながら
導くように さらに迷わせるように
僕はそんな日々を生き
そんな毎日の中で
ライオンにおびえるライオンには餌となる小動物のように
儚い命を決死の覚悟で揺らしながら
生きて 生きて 生きている
生きて 生きて 生きていた
いつしかそれらすべてが古ぼけたホコリまみれの過去になるまえにまだ会えてない君の声を聞かせてくれないか
遠ざかる意識をつないでも眠りたくないとわがままを言っても
気がつけば願いもむなしく僕は終わりの目の前に立っていて
そのドアをひらく
前日に目を醒ましたみたいに古くさい思い出を胸にして
ただふりかえる
ただ涙ぐむ
静かな音のない涙が流れ白い広い大地にしみて しみて しみてゆく終わりの日に。