詩人:望月 ゆき
風が見たいの、と
きみが言ったから
縁側に座っててごらん、と
言ったんだよ
本当はそこじゃなくたって
いいんだ
吊るされた青銅は
お寺の鐘にも似て
思わずぼくは
しあわせ、とかを
願ったりする
その間もずっと
風が見たいの、と
言いながら座るきみ
の黒髪はさらりさらりと揺れ
投げ出した足先を通り過ぎる
雲の影
もたれかかる柱には
もう名前すら消えた
いくつもの横線
隣には
孵化したばかりのメダカが泳ぐ
金魚鉢が
いつしか目を細め
うとうとと首をもたげる
さっきから風の中のきみ
のカーディガンが揺れるたび
一番下のボタンが鉢にあたって
カラン、カラン、と
涼をよぶ