詩人:望月 ゆき
扇風機に向かい
アー、と風をふるわす昼下がり
花すべりひゆは
だいだい色の花弁を閉じ
今日の仕事を早々と終える
台所から
氷のけずられてゆく音が
涼しくひろがる
夏さなか
あの頃
ぼくはちっぽけで
早く大人になりたかった
世界はとてつもなく大きくて
広く果てしないと思っていた
それに負けない
大きなものを持っていると
真っ白な氷の山
にせもののイチゴの赤は
たっぷりと
大人になった今も
変わらずにぼくはちっぽけなのに
世界はとても窮屈で
さっき吐き出した息を吸っては生きる
それでもなお
ぼくは
大人になってゆく
大人になってゆく