詩人:甘味亭 真朱麻呂
いつか見たような
授業中の教室の隅っこでこっち向いて笑いながら僕に手を振る誰かがいた
思い出せない
記憶の断片だけが
よみがえる
あんなにかわいらしい人なのに
人生はまるでエレベーターみたいにくだる一方だけど
そんな感じで消えてく 今日もエスカレーターみたいに上りがあれば下りもあるさ 下るばかりじゃつまらないさ
テンションや気持ちはいくらでもお酒を飲めばあがるのに…
なぜだかこのごろ
消えないようにと刻んできた思い出の日々が鮮やかすぎて
あろうことかうっとうしささえ感じてしまうようになったよ
やたら大人びた
大人にだけはなりたくなかったのに
いつの間にか
父や母の働く姿を見てるうちに心に自然とついてしまったみたいで
似たもの親子の完成です
さみしいくらい
似すぎてて僕は僕を探してたのに
こんなんでは満たされない
僕の背中が泣いていた
僕の背中が悲しいよと
僕の背中が月明かりに照らされて…
鏡に映る涙を流す
僕はもう今はあの頃のような未来を楽しみに待つ輝きはない
ただ忙しさに身をまかして自分のために働いて生きてく一人の現実と闘う男
なりたくなかった大人に僕もなってしまった
一人で暮らすよと心にもない言葉で家を出た僕
知らないあいだに人は誰でも大人になってゆく
否が応でも
人は皆 大人になるしかあとはないんだ
イヤでも
人は皆 いつかかならず大人と名乗るよ
さみしい気持ちが風になり吹いても
黄昏てばかりじゃいられないからね
走り出した夕暮れの鉄橋から見てたあの景色だけ抱けたらゆこう
沈んでく海の底へ思いも沈める
そんな景色眺めたらゆくよ
めぐらす思いからかえるから 今
僕は思い出に手を振り今を見つめる
悪いような気がしたってもう過ぎたことさと振り切るわびしさよ僕は振り返らない もう。