詩人:鈴砂
眼の前にある鉛の玉も
幼子にはわからない
見えるものは全て玩具
絵本も積木も人形も
はさみも包丁もストーブも
どれもこれもが楽しい遊具
紙一重の不思議の国
今日もうさぎの穴が手招いた
でも招かれたのは、そう…
そして彼女は帰ってきた
“おかえり”
“次は何のお話を聞かせてくれるの?”
目だけをぎらぎらさせ
傷だらけの笑顔を見せ
彼女は楽しげに声を弾ませた
そうか
君はまだわからないんだね
アリス、今日は何があったの?
今度は君が話して聞かせておくれ
君が見て来た物語を
私にも教えておくれ
いつか見た世界が
今はどうなっているのか
私も知りたい
私が語れるものはもう無い
あなたも見てきてしまった
私の話は終わった
そう
今日からはあなたがアリス
“何があったの、アリス?”