詩人:番犬
何も知らない
何も分からない
宇宙のどこに行けばいいのか
朝も昼も夜も受け入れてはくれない
またブルースの音色に全ては溶け込む
グラスで傾いた氷を見つめる
シャッターを閉めた商店街や市場を歩き回り、疲れ切って部屋に帰る
また夜から朝の橋を渡る
野心的バッファローは眠らない
また銃声のような足音が聞こえるが、フラスコの中で沸騰する液体に心奪われ、一瞬の旅の夢を見る
地球の全て、煤けるパイプの仕組みの中を旅する夢を
退廃は昔からの存在で、それは決して終わらない
移り行く朝も昼も夜も、季節さえも、濃度を増していく助けにしかならないのだ
昨日まで錆のなかった刀にも、今日の夜には錆が付いているかもしれない
また、昨日までは完全な球体だった天体も、今日の夜にはフォボスのように無惨な形に変容しているかもしれない
歴史や地理は必ずつながり、それは人のユニティとピースを生み出したが、その背後のピースメーカーも忘れてはならない
銃砲、歓喜、憎悪、差別、号泣、日照り
どれを取っても無関係ではありえない
アメリカのトウモロコシ畑の不作が日本の牛肉の値を上げるように、遠くの出来事はタイムパラドックス寸前の薄い絆でつながっているのだ
地球の裏側の少年の憎しみが波となり、我らに害を及ぼす事もまた必然だ
同じように我らの行動の一つ一つは世界を駆け巡り、インスパイアされ、それは未来の世界にも波及する、絆なのだ
と落ちた後の太陽を想い、こんな事を思った
退廃的呟き
終わり