詩人:甘味亭 真朱麻呂
今日が明日を呼び
導くとしたら
明日のない人の明日はずっと止まったままで 留守の家をたずねるみたいに永遠に明日は新しい明日を呼び続けるのか
明日がない人の死を知らないまま
たったひとつのドアの前でたくさんの明日が入る場所もないから
長蛇の列をつくりみんながみんな呼び続けるのか
いま考えてた
光のない部屋の前
考えてたんだ
呼び声高くあげて
君の明日を僕も
呼んだんだ
明日が来たことを
伝えるために
必死に 必死で
必死に 必死で
呼んだんだ
あの雨の日
君の終わりを
知るまでは
呼び続けたんだ
君にいつものように
明日が来たよ
もう朝だよと
いつもと同じように
迎えに来たよ
もう時間だよ
そう言ったけど
君には もう
明日がないくらい
真っ白な時間の中に消えてたんだね
終わりの見えない
長い人生のおしまいの日にさりげないくらいとつぜんに
君は影もくれないでこの部屋を空にした
ただ空虚感と嘘みたいな生活感を残したまま
あの君の脈動は今でも僕の中で生きている
真っ白い真っ白い世界へ飛び立つ羽根の舞う今夜も
まだ信じられずにいる遠い思い出からの帰り道で
回想の時はせつなく終わった
頭の中でなにか映写機のフィルムが止まるみたいに
ひとつの話が終わったみたいに
しぜんと君は僕の前から姿を消した
死という嘘くさい世界で一番悲しくもばかみたいなジョークを残したまま
僕はそれでも今も信じられずにいる
誰がなんと言おうと君の帰りを待ってる
玄関の鍵も妻の立場もあの頃のまま
変わらない屋根の下で待ってる 永久に
君の良く知る変わらない部屋で
いつか君がばかにした変わらない生活をくり返しながら
君の家庭菜園を引き継ぎながら野菜たちの世話役を立派につとめる。