詩人:甘味亭 真朱麻呂
僕を風にたとえたらどんな風になるでしょう
どこに吹く風になるんだろうか
もし風になれるなら広い草原に吹く風になりたいな
都会のよどんだ空気などない澄み切った青空の少し下を低空飛行する鳥を舞い上がらせる
この背中に乗せて
自由気ままに吹く風になりたい
たとえ話の中の僕はいつだって
本物の僕よりずっと何倍も輝いてて
かっこいいのはあくまでも理想だから
全て僕の自由だからさ
なにに生まれたとしても
つきまとうのはどんな生き物も同じ
その生き物らしい運命や事情を抱え生きることは変わりないさ
たとえ話で進む悲しいひとりごと それは僕の中だけでまかり通る孤独なルール
話がただどこまでも脱線していくけど
今さら気になんかしない
たとえ話がつきたころ
僕が君に話す話のタネがなくなったころ
きっと僕の中で回る世界は終わりをむかえるだろう
たとえ話に始まり
たとえ話に終わる
よりリアルな話で締める
それよりはたとえ話がいいなあ
生きてましたねってだけ
そんな遠い過去に生きてただけの人にしないで
なりたくないから
だからそうなるなら風に生まれ変わりたい
心無い人たちを見張るように意識を保っていたい
目覚めたように少し眠ったあとでいいから
風になった人たちの話聞いてた
風のひとりごと
風になれなかった人たちのグチは
もう誰にも届かない
"ばかやろう"の言葉さえ
もう何にも言えない
だからただ悲しくて
風になれたらなあ
風になれるならば
僕は今すぐにでも人間やめたってかまわない
自由な空へ舞い上がる翼などいらない
透明な羽根でいい
あるつもりで手をはためかせるから
ひるがえしたマントで覆い隠した今日はもう幻も同じなのさ
繰り返す日々に流されていつか全て振り返り思い返す時まで。