詩人:望月 ゆき
おや、河をめざしていたのでは
なかったのですか
はい、ここは河です
どうにも、ここは海、のようですが
その証拠に、
こんなにも広く、青い
河、ですよ
そこここに、橋がかかっていたでしょう
それでは、その橋を渡った向こうで
会える誰か、は 誰ですか
旅をしている、
いつからだったか、もう今となっては
ほこりっぽい、風
うすく煙った、空
はるか遠くのサボテンの声
横切る客船に、Mississippi、の文字
旅先ではいつも
とおりすがり、で
景色にとけこまず、
知ること、を無意識に拒みつづける
入りこまない、
自由
旅をしている、
ぼくは、きみへと
きみは、
やはり、ここは河のようですね
さきほど、船が
ええ、
けれどそれはもう、
どうでもいいこと、なのです
そうですか、
では、たいせつなこと、はなんですか
ここがまだ、
旅の途中、だということです