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詩人:さきネコ
愛の無い世界の中心に佇んでいた
永遠の桜の樹は石に姿を変え
時の流れに干渉されることなく
ただ静かに終わりを待っていた
未来が見えていたのなら わずかな希望の光が
こちらに気づかず すれ違うことも知っていて
白紙のページにはいつまで経っても
ただの一文字も刻まれることのないまま
散ってゆく 花弁も命も
切なく 儚く 歯がゆく 寂しい
だけど それでよかった
終わりのない物語なんてないのだから
陽はとうの昔に落ち
月も次第に欠けてゆき
全てが闇に飲み込まれてゆく様は
なんだかとても綺麗だった
記録できないから記憶しよう
確かにここに存在していた始まりと終わりを
愛の無い世界の中心に佇んでいた桜の樹は
最後の一瞬までとても幸せな夢を見ていた