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詩人:どるとる
帰り道はいつも切なくなる
自転車でも歩きでも時間の流れは変わらない
今日は気分がいいからわざと遠回りして帰ろう
なぜかなんとなくそうしたいのさ
夕暮れの空に浮かぶ
飴色の雲が 家に帰りたくなくてまだまだ遊び足りずだだをこねてる子供を母親みたいに見下ろしている
人はみんな帰る場所があるから 今日も行ってきますとドアを開けるのさ
そしてそうやって開けたドアを今度はただいまって言って開けるのさ
1日の始まり
1日の終わり
同じドアから始まり
同じドアで終わるね
今日は二回開けたよ
はじめは行ってきますと言ったよ
お次はただいまって言ったんだよ
お母さんは行くときも帰るときも優しい眼差し向けて
僕を送り出し 迎え入れてくれた
大人になっても
変わらないのさ
お母さん ただいま
お父さん ただいま
お姉ちゃん ただいま
お兄ちゃん ただいま
おじいちゃん ただいま
おばあちゃん ただいま
弟に ただいま
妹に ただいま
猫に 犬にただいま
インコにただいま
自分にただいま
僕は今日も何事もなく無事に帰ってきたよ
ただいまのドアを
そっと閉めて
夕暮れを食べた夕闇が夜に食べられて
やがて月がでしゃばって 星が夜空のステージでダンスをして
僕らは眠るんだ
明日の幸せ祈って
そしてまた朝が来たら僕は開けるだろう
何度となく開けた
おかえりとただいまのドア
ドアを開ける手も身体もなくなってこの世界から消えてしまうまで
何度も何度でも
繰り返し
僕は開くのさ
送る人に行ってきます
迎える人にただいま
行ってらっしゃい
お帰りなさい
その流れで明日も1日が始まり終わるだろう
日が昇り日が沈むだろう
いつも 当たり前のようにしていることが幸せだとも気づけなかった子供のころの僕も大人になれば
全てが幸せだったことに気づいて 涙を今頃流す。