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[129421] 月と梯子と蒸しケーキ

詩人:甘味亭 真朱麻呂

降り出した雨の雨粒数えて 数え終わる間もなくゆっくり後ろに退いてぼんやりしてる僕からチャンスをつかみ逃げ去る過去

未来はすぐそこでもう始まっていたらしいのに
僕はどうにも知らんぷりだから
始まってたって知らんぷりするだろ

紅茶に添えられたレモンの存在意義を問えば誰もが怒り狂い僕を責め立てる
甘酸っぱい波飛沫の夢
答なんて元からないんだと決めつけるように僕は港のはるか上空に見えたカモメの行き先ずっと目で追いかけるのに忙しかった
渡航船はもう明日あたりには港を出るらしい

そんな事さえ僕にはどうでもいいことさ
君にさえ僕の言い分をはねのけられては
足の踏み場も水飲み場も無いひどい世界

月面を急降下したいけれど無理なので滑り台をすべり思いのほか早くすぎた休日の苛立ちを紛らす日曜の昼
あの日ばかりは押さえつける重力に逆らって珍しく先生に反抗してみたよ
過ぎ去る日々と苛立ち隠せず暴れまわる青春の日々と霞ゆく景色を眺める幻になった昨日までの僕
そしてこれからの僕も昨日の僕と同じ明日をただついぞ望みを高くして願う
昨日と同じ夢をみて
夜空を駈ける願い星に願ったりなどする

どうか せめて
腹を満たす幸福や財布を膨らますよりも
どうか せめて
明日が来る当たり前でありふれた幸福を

僕に願わさせて
そして
願い叶えてくれ

つめたい雨を避けて走れば雨のあたらぬ場所がある
そこを希望したのに待っていたのは思いもよらぬ孤独
包まれて 月明かりに僕は夜空彼方に浮かんだ惑星を望遠鏡越しのぞいていた
夢ははるか億千キロ 何万光年? 切なさは変わらずに僕をそれでもオーブンのパン生地みたいにこんがり焦がす

降り出した雨
あれは幻
それとも現実

今ではわからぬ世界故
だからなんにも言えなくて
夢の話と割り振ってた
それですべてが片付くの?

2008/07/20 (Sun)
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