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詩人:たかし ふゆ
高校の時に詩を書き続けていた僕は、一人では行ったこともなかった東京に足を運び続け、書いたこともなかった小説で日々を営んでいる。
その原点は、何処にあるのだろう?
恥ずかしい話になるが、高校の時に詩で誉められて気を良くしただけなのだ。
調子に乗ったら、調子に乗ってしまった。それだけなのだ。
何かで勝ちたかったし、何にも負けたくなかった。そういう自分がいたがために、今、こんなことになってしまっている。
そうして、揺れながら生きている。
ああ、人間は勝ってもいかんし、負けてもいかんなぁ、旅立ったら素直が消えてしまうよなぁ。
二人してそう言いながら、思い出の中を歩いた。
その日は結局、そのまま朝方に解散になり、学生時代と逆のルートで家へと向かった。
本当は教師になりたかった自分が、朝陽の中を走る電車の車中からその日中、ずんぐりむっくり心のなかで揺れていた。
『指先の僕ら』