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[196556] 性根

詩人:遥 カズナ

小さな頃から
嘘が好きだし
嘘しか
話す気になれない

耳のそばを蝿がかすめる

シーミーと言って
年に一度
沖縄では親族がその先祖の墓に
集まる風習がある

本当に見た事にしか
語る価値を感じない

母の実家の墓は
本島に寄り添う
ごく小さな島の丘のふもと
建ち並ぶ墓の中
団地のポストのような一角にあり

あたりまえみたいに訪れてきた

子供の頃から
なぜたが
自分達の墓のある場所から
上に登った事が無い事に
その日
登ってみながら
初めて気が付いていた

各階のような墓のある等列が
段々ごとに
整然と続いていたが
終点付近は
異様だった

蝿が
そこら中を飛び交い
犬小屋みたいな墓が
いや、ただのコンクリートの箱が
横に向かって二三十は並び
中にはコンクリートの蓋が外されたような箇所もあって
寒気と鳥肌を感じながら

わけもわからず

とにかく
その場をあとにした

帰宅してから

大雨が降りそそいだ
台風が近づいていたのだ

この嵐の夜が
何もかもを洗い流してくれるように
祈るように布団の中に縮こまり
何もかもが外で雨風に打ち震え
遠退いていった

今も毎年シーミーはあるけれど
もう二度と
自分達の墓のある所から上へは
行こうとは思はない

俺は嘘が好きで
懲りない方だと
思っている

2023/01/21 (Sat)
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