詩人:りんくす
さて
泉の精が斧を届けてから
まるでふりだしに戻ったように
また毎日きこりは斧を投げ入れにやってきていました
そして泉の精が持って上がる度に
─俺の斧はどんなだっけなぁ〜
とはぐらかすきこりに
泉の精もいい加減ムカッとするようになり
誰にでも見せるワンパターンの作り笑顔ができなくなってしまいました
笑ったり泣いたり怒ったり…
親しくなるようでいて
名前すら知らないという一定の距離を保っていた二人でした
あるとき
泉の精が斧を持って現れると
きこりが溜め息をつきながら
─全然わかってねぇな…
と呟いたのがきっかけで
泉の精はキレてしまいました
押し殺していたせつなさがあふれ
自分でもコントロールできなくなり
泉の精は
泉の中に閉じこもってしまいました
次の日から斧は落ちてきません
泉の精は水面を見上げながら溜め息をついて
過ごしました
三日ほどして
堪らなくなって泉から顔を覗かせると
なんと
斧は茂みにほったらかし
切り株に腰をおろし
考えごとをしているきこりを見つけました
─やばい!
泉の精は慌てて隠れようとしましたが
瞬間、きこりと目が合ってしまいました