詩人:トケルネコ
この部屋には誰もいない
ただ赤と白と黒の柩が影を並べている
この部屋には誰もいない
白い柩には埋もれた声が眠っている
砕かれた波と 流れない雲と 諸々の太陽と月と星々の詩が
この部屋には誰もいない
黒い柩には干からびた石が詰まっている
立つべき足が 掴むべき腕が 流すべき数多の涙の化石達が
この部屋には誰もいない
赤い柩には錆きった鉄屑が散乱している
曲がった把手に 硬く冷たい錠に 儚く折れた小さな鍵が
この部屋には誰もいない
夕陽が溶けこむ
カーテンは淡いブルーの境界
この部屋にはもう・・・誰も来ない