詩人:遥 カズナ
机の上から
消しゴムが転がりおちて
弾んだ消しゴムは
君の足もとに
色鉛筆を
ザクザク、ザクザク、ザクザク
黄色と青と桃色も
鉛筆研ぎで
削りカスがゴミ箱へ
落ちていく
歩みよって来た事務員が
「銀行の方から、お電話です」
「はい」
なにげに汗ばんだ手の甲で
鼻の下を拭っていた
しっとりとした鼻先を
窓の外へ向けながら
眩しい梅雨の終わりの景色を
避けるようにうつむくように
電話を取った
ゴミ箱から
色鉛筆の削りカスの匂いがして
何も分からなくなりたい
衝動に耐えながら
君の足もとにある
消しゴムを
どうすることも
なく