詩人:望月 ゆき
わたしたちは「生きている」
のでは、なく
わたしたちは「生かされている」
のです
と、駅に向かう途中にある
十字架が屋根にのった
幼稚園の
せんせいは、言った
意味はわからなかった
けれど
せんせいはエライから
たぶん、そうなんだろう
ぼくたちは「生かされてる」
んだろう
でも、だれに。
って、聞きたかったけど
今日のおやつはプリンよ、って
ママが言ってたのを思いだしたから
聞かなかった
聞かないでも
わかる
朝日町商店街の真ん中の
魚屋のおっちゃんだ
いつも大声で叫んでる
魚のお腹にだって包丁刺したりするし
たしか
ずっと前に
商店街でもいちばんエライとかって
聞いた
それにしても
「生かされてる」わりには
ぼくは好きなもの食べて
ぼくは好きなことして遊んで
ぼくは好きなときに眠って
それって
それって なんだか
自由すぎやしないか
ママやパパとだって
一緒にいられる
ときどきは
叱られたりもするけれど
それは「生かされてる」んだから
しょうがないのかもしれない
それくらいは
だって
たいていはぼくが悪いのだから
ふむ。
「生かされてる」って
とっても
自由なんだな
それって
魚屋のおっちゃんにお礼言うべきじゃ
ないだろうか
そうだよ
こんどママと一緒に言いに行こう
そしたら
頼んでみるんだ
魚も生かしてあげて
って