詩人:どるとる
青い空 白い雲
蝉しぐれ 線香花火
夏祭り 縁側でスイカの種とばし
懐かしい夏がもうじき帰ってくる
長い長い坂道を 汗だくになりながら
暑い日差しに焼かれて あなたとのぼったあの夏に忘れてきてしまったよ たくさんの思い出 光り輝く記憶のかけら
そのひとつひとつが宝物だよ
もう多分二度とは返らないあの夏に
大人になった僕は夏になっても ただ暑いだけで エアコンの利いた部屋で 涼んでるだけの日々
幼い頃のようなドキドキやワクワクはここにはないよ
四畳半の安いアパートにも
夜中のコインランドリーにも
深夜のコンビニにもあの夏の香りは匂わない
今はもう願っても手には入らない夏のわすれもの
忘れたまま ずっと僕の胸に輝く僕だけの思い出
ほらもうじきやって来る 切なさを連れて
刹那に過ぎ行く日常会話のように ほらね 気づけば僕ももういい歳だな
夏にわすれものしてきてしまったよ でもそれが何かはわからない
でもとてもかけがえのない どこにも売ってない いわば幻ともいえるような きらめく思い出のかけら
僕の胸に今も突き刺さってる 思い出は痛みを伴って夏になるたび この胸によみがえる
遠い遠い夏のわすれもの ひとつ ほらね線香花火のように
ポタリ静かに 涙の雫こぼれるように
見えない思い出があふれた
狭いアパートの一室から ふと窓を開けた景色の彼方に見えた
打ち上げ花火
儚く 散った
ああ 切なさが部屋いっぱいに広がったよ
たばこ吸っても
目をとじても
耳をふさいでも
ごまかせない
あの夏の心地よい暑さは この肌にまだ少し その痕跡(あと)を残してるから
忘れられるわけはない
あの日の暑さ
あの日の僕の笑顔
空高く打ち上げた花火と大好きなあなたのぬくもり
その全てがわすれものだよ
ほら指折り数えるまもなく やって来る
面影のような逃げ水の彼方から。