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詩人:甘味亭 真朱麻呂
ちょっと思い出したらなんだか涙が出てきて
止まらなくなるくらい幼い日々の思い出はあまりにもきれいすぎて
あの日からずい分月日も過ぎてその数だけ大人になって
いろんなこと知りました
役に立つこと
まるで立たないこと
たくさん
どうして僕たちはいつでも悲しみを抱えてイヤってほど傷ついても
唇かみしめて歩いていくのか
不思議だね
夏のあいだだけ鳴き続けるセミのように決められた悲しさならよかったのに
坂道はずっとまだどこまでも日陰と日向繰り返しながら 続いてく 上へ行くほど歳をとりその分何かとものを知り
頂上に近づくにつれペースは崩れてダウンして行く
何かが変わればほかの何かも変わるよ
損と得はいつも同じタイミングでおとずれるから
損ばかりじゃなく
得もあるんだ
けれど
得があれば
損する何かもある
つかんでは消えてく何か きりもなく追い続けて
追いかけっこは続いてく
まるでひとりぼっちで鬼ごっこしてる気分さ
夏は通り過ぎて行く
ちょっと切なさはらんで残したまま
夏はまた吹き抜ける
僕の背中気づかないほど静かに ああ
いつの間にか夢をみてたようにどこかへ消えてく胸の中にあるおぼろげな記憶のパズルをつなぐように残像をひとつひとつ景色と重ねて
人はそれを思い出と呼び 大切な記憶とする
心にやきつけるように
一瞬しかない景色
もうもどらない時を抱きしめる
幻や蜃気楼を眺める気持ちでどこかばかばかしくも思いながら
僕はそれでも遠ざかる夏の背中をずっと見つめてた
見えるはずもない
秋の坂道の下から見上げるように見つめてた
またここから夏の坂道をのぼったようにのぼるんだね
人生の坂道の上り下り繰り返して行く
また秋の色に染まった街路樹を歩く 紅茶色の風に吹かれながら 行き先を手持ちの地図で確かめる。