詩人:フィリップ
重なりあった木の葉から
真実は圧倒的な存在として
チラリと姿を見せている
荘厳な世界には
賛美歌も
詩人の声も必要ない
東京には月が出ている
異国という惑星のいたる所で
生の営みが繰り返されている
吹き抜ける風に
シュロの木がなびいている
それ以外の言葉は
まだ僕には浮かばない
生きることを
いつも間延びさせ
今をどこで落っことしてしまったのだろう
洗濯物を増やさぬためのバスローブも
木漏れ日の美しさも
歪み無い飛行機雲も
全ては不具合な
一冊の本と同じだ
真夜中の静寂
波のさざめき
トーテムポール
全ては幻の中で
君に働きかけているのだと
茜の下で彼女は呟いていて
その世界は
セロハンと似ていた
公園のブランコも
街路樹の息吹きも
汚れた空気に
充満している
パンパンに膨れ上がったペットボトルの中にはただ
「AKANE」という名前だけが
音像として残っている
舞台『AKANE』メイン挿入詩