詩人:祈
――霧雨のなか濡れた髪を伝う雫―…。こんな日には涙が似合うと誤魔化したのは背を向けた後ろ姿――。あじさい通りをゆっくりとまたゆっくりと歩いては誰も知らないそんな物語指先で感じた雨はまだ思い出にはなりきれずに繋ぎたい指先のもどかしさもまた思い出となる雨を感じてる―――……。「さよなら」と言えないあじさい通りでは夕方の帰路へ向かう人たちがさりげなく通り過ぎていく――…。