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詩人:どるとる
遠い夏の思い出
鮮やかに今も
覚えてる
記憶の中に咲いてる
夜みんなでやった花火
しめくくりにやった線香花火 誰がいちばん持つかみんなで競ったね
僕はいちばん最初に落ちた 闇の中に音もなく静かにぽとり
それを見たら
なんだか夏の終わり
感じて 泣きそうになったよ
大人になるたび
あの鮮やかな
思い出が 少しずつ色あせてゆく気がしてさ だんだんと歳を重ねてゆくたびただ暑いだけの夏になるような気がして 頬を流れた涙 6月に見た夢
7月の陽射し 8月のうだるような毎日
全て覚えてる
全て悲しいくらいに
夏の終わりを どこかで予感していたよ
きっと幼い頃の夏はもうやって来ない
あの時は毎年 当たり前だった夏が 線香花火が落ちるように
静かに音もなく 消えた 消えた
祭り囃子が 遠く
ピーヒャララ
聞こえても
祭りに行かない夜
一人 布団にくるまって もう僕には夏は来ないと 目を閉じた 耳をふさいだ
遠く窓の外 天高く打ち上げられた花火が
なんだか あまりにきれいで 涙があふれた
本当は大好きな夏なのに 切ないんだ
だから 僕は目をそらしたまま 背中で過ごす季節 背中で過ごす季節
夏が通り過ぎるまで
その名残が消えるまで
線香花火が 落ちるまで。