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[168837] 上京物語

詩人:どるとる


東京に上京してきて
はじめて住んだアパート 四畳半の狭い部屋月二万の曰く付きの一室

風呂がないから 流し台でからだを洗った
シャンプーなんて洒落たものはなかったから ふつうの石鹸で頭まで全身洗った

仕事は月に十数万の安定した仕事に就けた
月に一度は必ず
田舎の実家にお金送った
毎月送られてくる
仕送りの箱の中に
母と父の応援の手紙
僕は泣きながら最後まで読んだ

遠く離れた父と母を心配しながら
毎日毎日僕は頑張っていたよ
励まされたり
慰められたりすることなんてめったになかったけど
東京の街で暮らし始めて十数年が経った頃 はじめて僕にも彼女ができた
あまりかわいくはなかったけど僕にふさわしく まあまあな彼女だった

やがて長年暮らしを支えられてきたこの四畳半のアパートから出て お風呂つきの綺麗なワンルームに暮らしを移したよ 引っ越しをする際に押し入れの奥に見つけた何枚もの御札に青くなった

まあお父さん お母さん
僕は不器用だけど
なんとかうまく
やっています
愛する人と二人
二人三脚で
雨の日も風の日も
暑い夏も寒い冬も
この東京で生きてる
明日も明後日も
きっと何十年後も
この東京で生きてる

第2のふるさと
東京の街23区をいつか制覇するぜ デートといえばまず思いつくのは東京タワー
古いかな
でも僕はあのタワーの展望台からの眺めがいちばん好きだ

そんなこんなで
続いてゆく彼の
上京物語

時々実家に帰って
彼女と父と母と僕で飲み明かせば
話は尽きない
歳なんだから
からだには気をつけろよと僕は父に言ったけど 父は照れ隠しのように横を向いて泪酒をあおった

空には満月がぽっかり浮かんでた

そんな物語。

2011/06/12 (Sun)
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