詩人:甘味亭 真朱麻呂
父の背中に幼いころ背負われて病院に連れて行かれた
父は泣きながら血だらけの僕を心配した
その時見た父はとても悲しげだった
いつか 母の両膝に耳をつけ夢をみたあの心地よいぬくもりのさなかで今も僕は成長中
まだまだ 二人から見れば子供の僕
だけど 突然ってくらい僕は大人でそんな大人になった僕を見る二人の目からは僕の目線とは違う位置から見てたから
見える僕が同じ僕でも
僕がただ鏡に向かって見る自分より尊くリアルに見えてるのか
血の通ったつながりをありがたく思えるときがきたら
きっと思春期の反発も今では光り輝く思い出といえるさ
いくつもの自分との卒業 そのたび渡された証書は心の中で何度も読み返した
父と母の二人から見れば僕などずっといつまでも子供で
しわくちゃな頭になっても記憶がこんがらがる日がきても
心ではきっとわかっているし見えてるはずだよ
僕のこと 世話焼いた日々を思い出して
かすかに笑ったあと泣いた愛と悲しみの日々
少しずつ色あせる景色 変わりゆく街の風景 それと同じに年老いて果ては消えてく大切な人々
されど遠ざかるのが宿命と涙をのんだ
夢の彼方へ消えていく光 秋時のせつなさに似たモノクロの残像が並木道の落ち葉のようにクシャリ しなって風に散った
その落ち葉の行方 誰もしらない
僕が二人に会いたくても会うすべをしらぬように
僕ごときでは無知すぎて届けたい思いさえはこべない
ただ悲しみに負けぬようにとつよく二人の死と生きていた面影だけを糧に生きるか死ぬかギリギリの瀬戸際でさまよう亡霊になって
僕はムネに深く突き刺さった悲しみと絶望の釘をそっと抜く
己の明日のために…
そんな事でとは思わないがあまりに思い浮かべれば懐かしすぎて止まらない想いがあるので影を捨てきれなくて今もまだ悲しい夢の中で目覚められずに居るよ。