詩人:高級スプーン似
隣室から
枕元へと響く声
とても不安定
気になって目が冴えて
眠れないのは
お前のせいか
けれども
ドアを叩く勇気はなくて
蹴破る力も
あるわけがない
インターホン
押す人差し指とこの心
折れる前に諦めた
黙って頭まで
布団をかぶって
数えるよ
黒い山羊の数
偶像でもいい
有象でも無象でもいい
疑うことも思い出さず
片時も忘れず
信じることができるもの
ひとつでいいから
くださいな
見上げた月から見下せば
とてもちっぽけな存在
そうだと言うなら
権利も証明も
要りませんから
私が誰でもいいから
何でもいいから
あかりを下さい
離れた場所から
照らして下さい
黒い山羊に
囲まれて
まわる影
長く伸び
ゆらり
ゆらゆらゆれ動く
中心に光
私の姿は見えない
熱にうかされず
冷たく静かな夜
今もこの胸は
猜疑心でいっぱいだ
音も無く忍び寄る声
お前のせいで眠れない