詩人:高級スプーン似
視界に入らない人達に
心の底から心を配り
目に見える私の存在を
丸ごと
無き者にしようとする
私は手を振る
それを口にする
「 」
信号は彼等の耳に
どうやっても届かない
確認を怠り
優しい失敗ばかり
何度も何度も
それにも気付かずに
どこかの誰かと交信し
そのまま
私以外の者を連れて
外に出ていってしまった
弱々しい光を放ちながら
私は点滅している
反応は途絶えたままだ
誰かが帰る気配もない
恥じらいも知らないも
総じて悲しみに通ずる
自ら私の頭をもたげ
相手の反応を伺いながら
必死になって
喜怒哀楽を返す
面白くない会話が
連続して止まらない
皮肉ばかりの喜劇
出来る限り早く
どこかに去りたい
この場はこの感情で
この表情でこのポーズで
合っているのか
合っているよな
訊く人もいない
もっと相手の顔を見ろ
どうしてのいいか
さっぱり分からん
無知が殻を破り
無恥になり暴れだす
去れ逃げろ関係を壊せ
これからの事など知るか
遠くへ逃げろ
ひたすら遠くへ
逃げるってどこに?
無理だろう
どうにか事が収まり
ほっとするのも束の間
いや
しおりを挟む間もなく
次から次へと
問題は浮上し抱え悩む
頭が重い痛い
考えたくない考えられない
頭ごとすべて
放り投げてしまいたい
まだやれるか
まだやれるな
やれなくても
やらなければならない
やりたくなくても
やらなければならない
逃げても
その先は此処へと続き
裁かれ暴かれ恥を晒され
水の泡
それだけは避けなければ
ずんずんずんずん
頭が気が重くなる
一方その頃
私は変わらず
出来損ないの
喜怒哀楽を使って
目の前の相手と
コミュニケーションを
謀ろうとする
けれど私は
誰それを見ているようで
実は誰も見ていない
目を合わせる相手がいない
皆さん揃って出ていった
違う
私がすべてを追い出した
同じ世界を見ていても
サーバが違うのか
もう出会う事もない
無知でも無恥でも
どうと呼ばれてもいい
そんなに難しいことか
ただ一言
「わかりません」
そう告げる事が出来ない