詩人:高級スプーン似
母の面影
残す赤子を
あやすうち
泣いているのは
目の前の赤子か
それとも自身か
わからなくなっていく
突如
鬼の形相に変わる
赤子の顔は
怒った時の母そのもの
私は驚き
手を離す
あっ、と声を出し
た時にはもう手遅れ
勢いよく地面に接触し
ピーナッツのように
砕け散るのは
母か赤子かそれとも
わからなくなっていく
まるで
マトリョーシカ
砕けた殻から現れた
笑う母の顔をした
ひと回り小さい赤子を
拾い上げ
安心すればいいものを
今はそういう
気持ちにはなれず
あのまま壊れた
ままだったらと
それを重荷に
感じてしまう
すると
どんどん
どんどん
手の中の
赤子はどんどん
重くなり
次第に苦しく
持ち続けるのが
困難になり
堪らず私は
赤子を母をそれとも
それを
床に落としてしまった
しかし
マトリョーシカ
落とさぬ命よ
砕けた殻から現れる
母の顔した赤子を
拾い上げては
床へと落とし
中から中から現れる
母の顔したそれを
いつしか私は
地面に叩きつけていた
はっ、と我に返り
見上げれば
そこには
私を抱きかかえて笑う
母の姿があったのでした
!
目が覚め
布団を捲り上げ
夢だと気付き
起こした半身を横に戻す
隣を見ると
寝息を立てる
母によく似たお前の顔が