詩人:是清。
今日より/足元覚束ぬ流浪ノ身
足高き木に登りて/遠く見遣る思慮深き濃紺の瞳
温い曹達水/彼の槿花
只今/微動だにせず
深く腰掛けるにお誂え向きな
安物の金属の椅子に座つて居ります
目蓋を震わせ級友達が唄ふのです
唯青い此の空
妾達の頭上を通過して往きます
後ろには弔電が
今も未だ教育と云ふ名の羊膜に包まれて居ました
其の事に気が付く事無く無駄な月日を重ねて来ました
叱咤して下さつた彼の整然と並んだ模範囚の皆様
今何故流れぬ/妾の頬に雨垂れは無く
今更乍らに涙腺の強さを
口惜しいと感じて居ります。