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詩人:フィリップ
通りの向こう側に
風を感じた
温度無きこの空間の中で
それは鮮明過ぎて
思わず僕は
立ち止まっていた
スペイン坂の辺りでエンジンを吹かす音と
焼きたてのパンの香りが
空気を掻き鳴らし
ゆっくりと伸びる影に沿って
風は西陽に照らされていた
生まれ変わる意味も
生まれ直す理由も
全て知っている
涙の味さえ
世界にとっては味覚でしかないというのに
一体この気持ちは何なのだろう
夜明け前の新宿を歩く
時は既に満ち足りている
体に感じる僅かな風圧の中で
今また
一つの詩が生まれ始めた