詩人:フィリップ
唐突に電話が鳴っている
受話器の向こうの世界を
僕はまだ知らない
好きだった女優が
先ほど女優でなくなった
時刻は日付変更線を越えている
生き残ってしまった罪悪感も
今日を生き延びている安堵感も
今となっては
紙切れのように薄っぺらい
人が人でなくなる時は
いつも辺りは真っ暗闇だ
happy,birthday
今日は確か
僕の誕生日
生と死の狭間の日
生き直すことも出来ずに
僕は今
死に向かって歩いている
途中下車も休憩もない
その空間で
ちょっとだけ泣きそうになる
一人部屋に女性が来た
朝を告げる目覚まし時計が半日遅れて鳴っている
ぎゅっ、とする
彼女が笑っている
そしたら
二人で笑い合っている