詩人:甘味亭 真朱麻呂
時計さん
時計さん
チクタク チクタク
時計さん
時計さん
どうして時間とともに私の命も削ってしまうの?
時計さん
時計さん?
あなたはどうしてなにも言わないの?
感情もなにもないあなたはただ時を刻むお仕事に夢中で年がら年中上の空
そんな無口な時計さんに私はいつか終わりの時間を告げられるのね
あなたはそれについてどう思う?
今までどおりあなたがやってきた通りに私の魂を空につれていく
私もその中のひとりでしかないですか?
ねえ…時計さん?
私の終わりの日くらいは頑張ったねの一言くらいはほしいよ
あなたに何度苦しめられたか 笑ったのか
疲れるくらい
悲しいくらい 長いつきあいだけどあなたは今まで一度も口をひらいた試しがない
あなたはそうまでも時の番人に忠実なのね
時計さん? 時計さん?
ヤッパリあなたはなにも言わない
誰にも心をひらかない
そもそも心がない
ひらくのはカラクリ時計の鳩がでる扉くらいで
さみしいぜ
鳩ぽっぽ
ジョーダンみたいにいつかまじめに悲しんでしまう終わりが来るのに
当のあなたはただグースカ寝ているだけ
まるで私みたいだわ
時計さん
それでもあなたを頼りにしないでは生きられない
リズムつかめない
不安になる
だから見つめあうの
あなたの鼻からのびたお髭みたいな針が今日も指し示すふたつの短い矢印と長い矢印で
私の命を刻む
無言で ただ任務を遂行する衛兵みたいに常識やその流れに忠実なロボットみたい
機械だから あんまり好きにはなれないけど
あなたなしにはうまいこと毎日が進まなくて困る
だからあなたは彼の二番目に大切な存在よ
時計さん…今私の話無視したあなたのことよ
顔を真っ赤にもしないのね
プロポーズじゃないからあれだけどなんかしゃくだわ…