詩人:どるとる
都合の悪いことにはモザイクをかけてしまえ
どんなに悪いことをしてもバレなきゃ大丈夫
大人でもないような
子供でもないような
僕は大人でもなく子供でもなくただの人間さ
政治家の裏金も その愛人の秘部も 大して変わらないさ
それを隠すモザイクは人の悪意と性欲への抑制
またはプライバシーの保護
自分さえ良ければそれでいい そんな奴らで溢れかえったら
きっとだめになる
だめになる
そんな人の悪意を
隠すモザイクはないですか?今流行りのレンタルで
ああ 戦争を知らない時代に生まれても
戦争の悲惨さはわかるから
美術館に飾られた誰かさんの絵なんかよりずっと白黒写真の中で小さく微笑む少年の瞳のほうが何倍も価値がある
モザイクで隠さねばならないところばかりある世界
あなたがついた嘘も
僕が隠してる秘密も
まだまだ小さなもんだよ 知らないあいだに今日も誰かの悪意に泣きを見てる人がいるんだ
R指定にするべきは人の悪意だろう
今日も無修正の
悪意が無関心という服を着て歩いてる
自殺の多い国日本
その片隅でひっそりと暮らしてる僕の夢は平穏な毎日を送ることだよ
人の悪意を隠すモザイクはない
さらし者みたいに
あなたの悪意は僕に筒抜けさ
だから僕はあなたを憎み 必要なら殺めることもできる
でも僕は憎しみにモザイクをかけて 忘れたふりで 日々を生きてるのさ
『社会ルールは 守りましょうとか
廊下は走らないように』
同じような教育を受けてきたのに明らかに違う僕らの頭の出来の良さ
ああ それでも僕は
今日も義務的だけど
然るべきルールの中で生きてる
余計な事にはモザイクをかけて聞きたくないことにはピー音を入れて
荒波にのまれ
風に吹かれ
今日も人ごみに紛れ たゆたう葉のごとし。