詩人:けむり
笑うのは苦手じゃない
悲しいときにも泣けないけれど
楽しくなくても笑えるから
母さん
頭ん中にあんたがいるよ
いまだにあんたの顔色を気にしている
怒らないだろうか 叱られないだろうか なんて
ミジメだけれど染みついているアイデンティティだ
なるべく関わらずにいたくて
電話はナンバーディスプレイだけれど
ときどき人から言われるんだ
「もっと気楽にやれよ」って
言葉の意味は納得なんだけど
どうすりゃいいのかわからないから上のウケはいい
だからいつもヘトヘトで帰ってくるけど
よく悪い夢で目を覚ますんだ
ほら 昔よく聞いたあんたの口癖を夢で聞くのさ
なあ おれは夢を馳せたことがあったろうか
あんたが気に入るようなもんじゃなくてもさ
こっそりとでも おれだけの
ただ思い出せないだけなんだろうか
近頃やけに疲れるんだ
仕事も友人関係も順調だけれど
あんたに相談することでもないんだけれど
なにかあるたびいちいちわからない
音楽を聴きながら音楽が欲しいと思うように
どういうふうに感じればいいのかいちいちわからなくてさ