詩人:遥 カズナ
夕映に
翼をひろげ
背中を向ける
白い鳥の
片翼の先が
コリドーのように
どこまでも続いていて
光の加減で
淡い紫陽花色にも
羽毛がさんざめき
振り返りもせず
ただそこにある
そのことの意味合いを
知ろうともせず
我慢してるわけでもなく
ひたすらなぞるように
歩み続けている
こんな静寂が
そんなにいやでもない
けれど
嫉妬だけはあって
例えば
点描画の黄色い一つの点や
トライアングルのただ一度の響き
なんかにだ
優れた画材や楽器があっても
要はその使い手なら
紙面に文字を
這いつくばらせたままに
しているのは
私自身に他ならない
できることなら
翼のいらない
消えない流れ星を
したためてみたい
夜空を見上げた
瞳に映る
東の地平線から
西の水平線にまで
満天を横切る
またとない
閑寂な一筋を
天の川のせせらぎのたもと
繊細な白磁器のような
指先を握りしめ
自分の鼓動とは違う
魂の高鳴りを抱き
星々のはざまをぬうように
繰り返し、繰り返し
ターンしながら舞踏会を踊る
よどみない
旅路の残像を
焼きちらしながら
そんな
まんべんなく
精錬された
命の切っ先の
あらわな感触の創意を
紙面へ穿ち続ける
エンドロールの終わりまで
名もなく
過ぎ去ろうとも
「なにを書いているの」
「詩さ」
「そう」