詩人:望月 ゆき
一秒ごとに
あいまいにぼやける
まちの、輪郭
潮騒がおしよせて
すべての境界線を消してしまう
抱擁する、
抱擁する、夜の、
水槽
よじれるカラダで
白い波をぬって
見つからない場所まで、およごう
ほそく、ほそく、
規則ただしい、呼吸で、
かすかな振動は やがて
ページをめくる 波の、
ゆびさき
先へ、先へ、
奥へ、奥へ、
そうして
ほんの数ミリの差でむこう側にある
空間へと、届く
へだてていたガラスも
さっき、割れた
ふりそそぐ破片をぬって
朝がこない場所まで、およごう
ふれているのは、
くちびる
ただ ふるえるだけの
すって、はいて、
ほそく、ほそく、
(規則ただしい、呼吸で、)
ときどき
わたしたちはその時間を
せっくすとよんで、わらったり、する