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[63637] 黒イズム・端的な極愛論

詩人:地獄椅子

好きな人ができたなら、まずはその人の欠点や暗部を見ることです。
盲目になりがちな恋に浮かれて、長所や好きな部分ばかりが見えても、時を経れば見えてくるのは、嫌な部分ばかり。

次第に慣れ、新鮮味を失くし、倦怠すら押し寄せ、揺らぐ恋心。
第一印象だけで決めたつもりになっても、やがて必ず訪れる波乱。言うなれば試練。
確かな愛があるのなら、どんな困難にも折れず、乗り越えていけるでしょう。
しかし、表面だけで選りすぐりした場合。簡単に破局はやって来る。

その人の全人格を引き受け、絶対的に肯定する覚悟はあるか?
淋しさの埋め合わせや、欲望の対象や、アクセサリーとしてではなく、関係を掘り下げ、深めて温めてゆくことができるか?
傷、闇、弱さ、汚れ、秘密、劣等感など負担となる感情を共有できるか?
長期的なスパンで成長し合えるか?
馴れ合いや寄り合いではなく、シビアでありつつフラットに活かし合えるか?
一人では埋め難い穴や隙間を補完し合えるか?

永遠のパートナーシップ、それは二人三脚。
歩調や歩幅を合わせながら、互いに協力を惜しまず、助け合いながらも間違いを正す潔さを持つ。
宗教的な信仰にも似た絆を結ぶ。

非難の槍が降ろうが、中傷の石つぶてが投げ付けられようが、矢面となって身を呈する。
甘っちょろい満足は若気の至りで済ましておけ。

いいか。自己を犠牲にできる意志や、見返りを求めない無私の域に至ってこそ、愛だ。

距離や時間など二次的なもんだ。
心から繋がっている同士なら、そんなもの関係ない。
高次の状態にでもなれば、いつどこでいかなる場面であろうと揺らぐことはない精神を保てる。

小便臭いくそガキの恋愛論など、焼却炉で焼き払え。
エゴイズムとフェアネスの見事な共存。
冒涜できぬ不可侵の領域。
それは美しい姿だ。
辛酸舐め尽くし、酸も甘いも知り尽くした魂。
それは高潔な姿だ。

愛という高みは、底深き闇の彼方。
孤独を超えた孤独の淵。
追い込みながら余裕の境地。

激しく燃え盛る炎ではなく、静かで穏やかな灯。
ただ守り抜くために捧ぐ命。

地獄まで手を添えていけるなら、天国を羨望したりしないだろう。

2006/01/19 (Thu)
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