詩人:さみだれ
白い原稿用紙に
とりあえず名前を書いた
浮いた鉛筆が
意地悪く僕の右手を刺す
どこからか花の匂いがする
だからなんとなくそれを書いたんだ
今じゃなくていい
いつの日にか見てほしかった
積み重なる消しゴムが
嬉しそうに僕の右手にしがみつく
閉じられたドアから音はなく
だからなんとなくそれを書いたんだ
(君は願います
いつか素晴らしいものにしたいと
生活も心も目に見えないものも
痛々しい傷を増やしながらも
君は願うのです)
白い原稿用紙に
とりあえず題を書いた
芯の折れた鉛筆が
嬉しそうに僕の左手から去った
何かしら書いてみたい
だからなんとなくそれを書いたんだ
(詩)