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詩人:右色
貧しい薬草売りの一家は
少女が原因不明の病に倒れたその日から
裕福になった
病床の少女は母親に尋ねる
「なぜ、急に私達はお金持ちになったの?」
母親は少女のおかげだと言った
次の日、少女は父親に同じ質問をする
すると父親はとても笑顔になって
「お前の血が、どんな病気も治す薬になるからなんだ」
父親はそう言って少女の白くて細い腕に針を刺す
少女は血を抜かれる度に
とてもとても苦しんだのだけれど
それ以上に嬉しかったので我慢出来た
こんな自分でも人の役に立てて嬉しかった
しかし
ある晩唐突に真実が顔を出す
その夜、いつも晩御飯を持ってきてくれる母親が来なかった
その夜、いつも血を抜き夢を語る父親が来なかった
代わりに哀しい目をした男の人がやって来た
「僕は君を殺すよ」
男の人は赤い涙を流しながら言った
少女はきっと男の人は何か病気で苦しんでいるのだと思った
「そんな怖い顔しないで。私の血を飲めば大丈夫だから」
少女の無垢はしかし
真実によって赤く汚される
「君の血はとてつもない毒薬なんだ」
少女は否定する前に彼の目の真実に焼かれる
灰になる前に少女は願った
「ならば、私を殺してくださいな。そうすればきっと多くの人が助かるのでしょう」
男の人は頷き
少女は願い
最後の最後で少女は薬になった