詩人:夢野咲道
「歴史上、止まなかった雨は無い」
「明けない夜は無い」
そう、言う人はいるけれど
闇の中で彷徨い続けている人にとっては
そんな言葉はどれほどの気休めになるだろう?
出口の見えない不安。
歩く方向さえ見失って
それでも、立ち止まる事が怖いから歩き続ける。
入り口はとうに崩れ落ち、先に進む事しか道は無い。
不安、焦燥、苛立ち・・・
昔読んだ誰かの本の中にこんな一説が有った。
『パンドラの犯した罪の中で一番の罪は
最後に希望を出した事だ。
希望が有るから、人は悩み、苦しみ
それでも、希望を捨てられないのだ。』
パンドラの箱の物語。
それは・・・
ギリシャ神話の神々の時代
ゼウスは神々に呼びかけて様々な贈り物をパンドラに与えた。
しかし、その贈り物の中に決して開けてはならない「箱」があった。
ある時、その箱の中から助けを叫ぶ声が聴こえた。
『出してくれ〜』
『出せ〜!』
『誰か助けてくれ〜!』
その声を聞いたパンドラは恐る恐る箱の蓋を開けた。
その途端、悪意、憎悪、妬み、偽善、暴力、悲しみ、病気、飢え、狂気・・・
ありとあらゆる様々な災いがこの世に飛び出した。
怖くなったパンドラは慌てて蓋を閉めようとした。
その時、箱の中からか細い声がした。
『私も出して下さい・・・』
パンドラが恐る恐るもう一度蓋を開けると
か弱い小さな光が外に飛び出した。
最後に一つ残ったもの、それは「希望」だった・・・・
希望が有るから人は生きていけるし又、生きようとするのだ。
しかし、希望が有る事で逆に人は悩み、苦しみ、もがくのだ。
明日にすがろうとする。
いっそ、希望なんて無かった方が幸福だったと言う人がいる。
果たしてそうだろうか?
例え、どんな苦しみの状況にいたとしても
どんな困難の状況にあったとしても
人が諦めない限り「希望」は決して人を見放しはしない。
例え、どんな暗闇の中にいても・・・