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詩人:甘味亭 真朱麻呂
みんなの嫌われ者ゴキブリ カサカサ 触角ふるわしながら
台所の隅から わずかなタンスの脇から黒いからだを光らせてカサカサ 地面を這う
でも考えてみて
ゴキブリだって生きてんだよ
生きるのに必死じゃない生き物なんていないんだ
嫌いになっても簡単にころせばいいやなんて考えでつぶさないで いやなのはわかるけど
それがあいつの生まれもっての姿なのさ
キミもゴキブリだったらどうだい?
人間でよかったなって思うだろ
嫌われ者はなにも悪くはないのさ
あんな姿をしているからカブトムシみたいには扱われない
汚い 気持ち悪い そんな目でしか人は見ないけどキミがもしゴキブリならキミもつぶされるよ、少しはゴキブリの気持ちになれよ、自分ばっかし守らないで
人間も同じさ
ゴキブリみたいな人間もいるだろ
今日も人間が子供を生むように
ゴキブリだって子供を生んで子孫を残したいと思うよ 当たり前だ
ゴキブリ並の生命力で雑菌みたいな繁殖力で同じ姿をした僕もゴキブリみたいに増えていったら
町中 大騒ぎ
ゴキブリ大行進
涙も流せない無防備な彼らは丸めて筒状にした新聞紙でつぶされてはゴミ箱へフォールイン
それがゴキブリの悲しいさだめであり宿命
背負ったおもりが重すぎて もうフンコロガシのほうがこの頃マシに思えてきた カナブンにさえ嫌われて
ゴキブリ カサカサ
ゴキブリ ザワザワ
鳥肌もの あっちにいけ!
今日も物陰に隠れて人間につぶされないようにつとめてる
意外と苦労してるゴキブリは今日も人間の目を気にしてる
別に人間を困らせるためにいるんじゃない
わずかな塒(ねぐら)を提供してくれればいいだけなのにどうしても悲しいさだめが邪魔をする
何度その身を恨んだことだろうか
まるでその悲しみが伝わってくるほどだ その黒々としたからだにいくつの悲しみが詰まってんのかな。