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詩人:甘味亭 真朱麻呂
街は灯りをともして夜になればガラスの中で静かに揺れる
僕の家の灯りもともれば静かに僕の心にも夜がおとずれる
猫の姿をしたペラペラの夢が窓の隙間から忍び込んでくる
僕の心を盗む気障な怪盗は今宵も不適な笑みを残しながら
その笑顔の裏にたくさんの涙を隠しながらマントひるがえして気づかれないように拭う
僕の前じゃいつも笑顔で装いながら
無駄な心配させないようにとやさしいあなたはいつでも笑ってる
それでも僕の中にあるあなたのイメージは見えている姿よりずっとやさしくてずっと頼りなくて それでも愛のあるあたたかな人
まるで街にともる夜の灯火のような人
影もゆらゆら揺れる
今日もまた夕暮れ
やがて夕闇が空を包み昼間の明るさがうそみたいにほら雲が遠く流れてく
カラスも巣へと帰る
低い鳴き声 もらしながら
静かに僕も靴音立てながら歩きでいつものルートで家路をゆく
街に灯りがともれば夜が静かに街をやさしく包み込む
抱きしめるように夜が街を包み込む
夜はまるで貴方のように私を包み込む
半透明のスカーフで包み込まれたみたいに街は霧に覆われて
どこか淋しげだ
ふいに泣きたくなるね
何度この景色に泣かせられたかわからない
だけど 貴方と暮らすこの街は朝も昼も夜も変わらずにおなじやさしい顔で私たちを見守っている
悲しいときは励ますようにそっと月がそばにいてくれるし
夕暮れのせつないあの色は大丈夫だよといってくれてるような気がするんだ
僕の勝手な考えかもしれないけど
そういうことにしておいて
街はなんにも言わないがきっと口を利けたらそう言うだろう 僕にはわかる
だって長いあいだこの街に住んでるから
貴方のようにこの街は今夜も私にやさしいよ
貴方に嫉妬されるかな 街も貴方も大好きなんだって言ったら
うふふ
貴方は笑ってくれるかなぁ…夜