詩人:剛田奇作
夜明けの排水溝からピンクのトンボがでてきて
私にキスをする
洗ってない食器が無造作に置かれた台所
暇が怖い
寝巻にコロンを吹き掛けて
薄暗い路地に出る
何となくサボテンを買いに行く
インドカレー屋の看板をフランス人が凝視している
不意に逃げたくなった、11年前の講習を思い出した
ついに夜明けが肩を叩く
振り返ると、スポーツカーに乗ったラーメン屋の息子が微笑んでいる
なかなかいい声の持ち主らしい
明るくなり
蛍光灯が消えた
ぶんぶん言ってた蛾たちも解散した
町が呼吸を始める前に
私はジュラ紀の鳩をおもいながら
四畳半に帰っていく