詩人:望月 ゆき
雲が、ちょっとのすきに消えてしまうので
わたしたちはいつも
空から目がはなせないまま
たちすくんでしまう
ちっぽけな球体のうえで
手をのばしても
届かないものがある、
って
知ったのは、3日前で
その瞬間も 白いチョークは
子供たちの手によって
アスファルトのうえで
雲へと生まれかわっていた
昨日の雨が洗い流してしまう
とは
誰も、語らないまま
生まれしものは いつか消えてゆく
かなしいことが、あった
たぶん この先もあるだろう
うれしいことも、あった
それが この先もあるか、知らない
そうしてそのどちらも
なんでもないことなのだ、
と わたしたちは知ってる
(まして、球体においては、)
五月の青さに
つい、とよそ見をしたそのすきに
てっぺんの雲を分断しながら
雲雀がみじかく、うたった