詩人:タンバリン
それから彼女は、何回も電車を乗り換えたり、プリンを買って食べたりしました。電車は毎回、4度目の乗り換えで元の線に戻って来るので彼女は家に帰る事が出来たのです。
それなりに人生を送る事が彼女にとっては苦痛ばかりで、彼女はよく泣きました。そしてその後プリンを買って食べたりしました。
彼女は17歳の夏に起きた小さな事が自分を変えたのだと思いました。だからそのもっと前に戻ろうと思ったのです。
そうして、あの頃大好きだったプリンを買って。ときどき、純粋で汚れのない日々を思い出しました。
夏の匂いがした日です。たくさんのプリンの容器と小さなスプーンを残して、彼女は居なくなりました。
アスファルトに落とした涙はみんな、すぐに乾いて消えました。立ち直ろうとする気持ちもいつか誰かを愛した事も、みんなみんな、乾いて消えてしまいました。
彼女の家はただの古い家になりました。
プリンの容器と乾いたスプーンだけが残っていました。彼女の胸にはセピアの槍が刺さっていました。
彼女は踏み切りの前―
傷を付けられたっていいから、誰かに心をすくって欲しかった。あの頃の甘さを無くしたら、もう私は人間ではないでしょう。お母さん。お母さん。
‥私は飛ぶ
遠いところまで、
さよなら、現実