詩人:あいる
噛み合わなくなったファスナー
中のものが取り出せない
錆びてるからじゃない
けがれて古びたからじゃない
失くしたくないものがあるんだ
もう手放したくない感情ごと
誰にもさわれないように
いつも大切に持ちあるっていた
ふとしたことからファスナーが開いた
口をあけた空っぽのバッグ
何処かに落としたのかな
私だけの星
戸惑いと焦りの津波
夜の薄闇が視野を染め上げていく
いつも私を照らしてくれていた
幻だったのかな
私はバッグを投げ捨てる
ビルの屋上で朝を待つ
ふと地上に輝く灯り
私の一番星
錆びても
古くなっても
ほころびができても
何度でも紡ぎあわせて
この感情を大切にしてた
形なんかなかった
私は安心して自分の胸を押さえる
バッグはもういらない
この手はあなたを抱きしめるために
あなたと繋ぐための手だ
愛してる
愛してる
愛してる
星空のなか
抱きしめあい繋ぎ愛
二人はファスナーになる
いつも私を照らしてくれてたんだ
重なる唇
閉じた瞳の奥に形のないものがみえかけて溶けた