詩人:遥 カズナ
物語は
誰の手のとどくところにも
きっとあって
それは
誰の事も
見限ったりは
しない
机からこぼれ落ちて
気づかれないままの
消しゴムですら
落とし主に
気づかれなくとも
間違いなくそれは
そこにあり
消えたりは
しない
消しゴムは
持ち主を
置いてきぼりにできず
始まりから
仕事をしている
胸のすくような
潔い
終わりたくない
終わりに
奔走する
掃除機にでも
吸い込まれたか
あるいは
猫が咥えて
とんずらしたか
いや
消えたりは
できない
消すのが
役割なのだから
物語を
消してしまうかどうかは
持ち主が
決める
役割なのだから