詩人:地獄椅子
壊れゆく星の片隅。
くたびれてきたTシャツをそこいらに投げ。
徒然なる悲しみのイコン。
腐敗した永久幻滅機関。
呪われし抱擁は愛を枯渇化。
みんな死んだ。
どう思う?
服に染み付く汗の匂い。
新陳代謝は罪と許しを循環させる。
荒漠した光景に萎んだ風船は地に墜つ。
最後など呆気ないものさ。
思惟としての存在。
人類代表して無人の廃墟を徘徊する。
栄華を勝ち誇った摩天楼。
虚となった高層ビル郡。
電気ガス水道は軒並み停止。
車も電車も船も飛行機も見当たらない。
不思議と死体すら転がっていない。
真に独り。
清々するかと思ってた。
嫌いな人間も居なくなると淋しいものだな。
何の張り合いも無くしてしまった。
複雑で高度化した文明は人間を生存競争から脱落させた。
弱い皮膚。脆い神経。
武器は発達した知能のみ。
だが肝心な食糧がない。
空腹が雑草を頬張らせる。
超異常気象時代。
もはや季節はない。
猛暑と酷寒の日が交互に訪れ、身体機能は誤作動し放題。
昨日の汗だくの衣類は凍結しフェイクファーのコートを羽織る。
あちこちに核の爪痕を残し、そんな人の過ちが無情なる世界の哀れみを、こんな私を惨めにする。
あいつらと同種族だったことを恥じ入る。
平和など一度として在ったか?
自然災害だったのか。人災だったのか。
必然だったのか。偶然だったのか。
そんな最期を身の破滅だと考えた。
一千億の惑星の中のたった一つの小さな青いオアシス。
きっと何事も無かったかのように、宇宙は続く。さも永遠顔して。
子供の頃。
憶えてるかい?
野山を駆けずり回り、泥に塗れ日が暮れるまで遊び惚けて。
こんな日が来ること想像すら出来なかった。
思えば優しき人が周りにいたからこそ、私はやって来れた。
愛という玩具を弄んで、傷付けたり裏切ったり。
我侭で自分勝手で傲慢なまでに寂しがり屋で。
こんなに愚かで素晴らしき種はいない。
主よ。
今日という日も空は青い。
そうして私は呼吸する。
お迎えの時が来るのを待つように。
みんな死んだ。
私は独り。
黒に帰還する。
塵の悩ましさ。
もう動けない。
目を閉じていいか?
なあ友よ。地球さんよ。