詩人:緋子
どこかで脱ぎ捨てたはずの自分の殻が
どうして未来を覆い隠すのか
だれもが前を向いているというのに
私ひとり 俯いて
歩けない
また、置いていかれる?
逆戻り。
遠ざかる、
忘れていく、
手放してゆく
どんどん広がっていく 恐怖
つかみかけた当り前は、
こんなにもたよりなく
握りしめていた掌の中から
崩れ去っていく
痛みが頭蓋の内側にじわじわと立ちはだかる
暗黒にこの目を塞いでは呼吸を奪う
自分が欲しくて、何度も傷つけた
わけもわからず人目も憚らず
何も見えない眼球を振り乱して
また、繰り返してしまいそうで
たった一言。
わたしとみんなを隔てる
決定的な言葉。
きっと意味のない通り過ぎていくだけの日常。
わたしひとりが恐怖を感じていたの。